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留学体験記
〜ペンシルバニア大学ロースクール(LL.M. 2007)〜


2006.9.23 原 優子

6.Bar Exam
 LL.M.の卒業式が終わった頃から、多くの学生がBar Exam(司法試験)の準備を始めます。私は、LL.M.の1年間では応用科目しか勉強ができず、基本法が殆ど学べていないということを反省し、米国法の全体像を学ぶ意味でNY州のBar Examを受験することにしました。ただ、Bar Examの受験に関しては悩まれる学生の方も多いかと思われるため、いくつかの疑問について検討したいと思います。

Q:Bar Examとはどんな試験ですか?
A:Bar Examは、各州毎に年2回行われます。試験は、択一試験と論文試験に加え、MPT (Multistate Performance Test)という短時間で課題に沿った法律文書を作成する試験で構成されます。この他、倫理試験にも合格しなければ、最終的に弁護士登録はできません。
合格率は、全学生(外国人留学生含む)では約7割ですが、外国人留学生の場合は4割前後です。

Q:NY州等の弁護士資格は日本で役に立つでしょうか?
A:日本人が日本の弁護士として活動していくうえでは、外国弁護士の資格があっても業務上格段の利点はありません(名刺に箔を付ける意義はあるかもしれませんが)。
また、Bar Examに合格しても、LL.M.の学位だけで現地の事務所に就職して米国の弁護士として活躍できるかというと、それも難しいと思います。現地の学生はJ.D.という3年間の勉強で基本法も含めみっちりと勉強しており、Bar Examに合格しただけでは太刀打ちできないと考えられるからです。
日本人で大手の法律事務所に勤務されていた方で、所属事務所の関連のNYオフィス等で勤務される方は多いですが、こうしたネットワーク無しに大都市のトップローファームに採用されることは困難でしょう。
実際に、日本の弁護士の方でも、Bar Examを受験をせずにLL.M.卒業後すぐに帰国される方も多々いらっしゃいます。

7.留学のメリット・デメリット
 私のように、法科大学院在学中に海外ロースクールへ留学する人は、ごく僅かです。いずれは海外留学をしたいと考えている方でも、この時期に行くことに対しては、躊躇されると思います。その第一の理由として、新司法試験の受験勉強がおろそかになることへの不安が挙げられます。

 その不安は否めないと思います。実際に、私は留学中の1年間は全く日本法が勉強できませんでしたし、帰国から約9ヶ月後に日本の司法試験を受けなければならないというのも、かなりのハードスケジュールでした。

 しかし、今後、法曹の数が増えるとともに留学志願者も増加するであろうという予想を踏まえると、交換留学の制度を通じて留学の機会を手にすることができるのは非常に有難いことです。新司法試験合格後の就職活動を考えてみても、海外留学の経験は大きなアピールとなります。また、金銭的にみても、交換留学の制度であれば海外ロースクールの高い学費(年間400万円前後)を払わずに済むという利点があります。外国法を学ぶことで日本法に対してより関心が深まり、また、日本法に対して依然とは違った比較法的観点から見ることができるようにもなると思います。

8.最後に
 留学は新司法試験に向けた勉強とは別のものです。そのため、「ロースクールでの生活=新司法試験に向けた受験勉強」というように結び付けて考えておられる方には不向きかと思います。

 しかし、私はロースクールでの生活は、ただの受験勉強だけで終わらせては勿体無いと思っています。将来的に国際的な仕事に就くことを希望される方はもとより、そうでない方にとっても、留学を通じて得られる経験はこれからの人生をより豊かにする絶好のチャンスだと思います。

 ですから、個々人の事情はあると思いますが、留学に伴うリスクばかりに目をやらず、留学という選択肢も是非一度考慮して頂きたいと思います。
 本稿がその一助となれば幸いです。

2000-2004年 金融機関・シンクタンクに勤務。
2005年 早稲田大学法科大学院入学。
在学中の2006-2007年にペンシルバニア大学
ロースクールに留学。
2008年 早稲田大学法科大学院卒業。

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