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エクスターンBefore・After

2006.6.29 大塚 麻衣子
派遣先:長島・大野・常松法律事務所
派遣期間:2005年8月22日〜2005年9月2日(2週間)

1.Before

 2005年8月22日、期待よりも不安の方が大きなまま、私はこれから2週間エクスターンとして実習する長島・大野・常松法律事務所(以下「NO&T事務所」という)の前に立っていました。
 まず、私がなぜNO&T事務所でエクスターンをしたいと思ったのかということから話していきたいと思います。
 NO&T事務所は、主に企業法務・取引案件を扱う事務所であり、所内には約200名の弁護士が在籍する大手事務所です。業務内容は、「一般企業法務」「企業買収(M&A)」「金融分野」「税務」「知的財産権」「紛争案件」と多岐にわたっています。
 一目見た感想は、「わぁ・・・難しそう」に尽きると思います。私の感想も正直それに尽きました。
 しかし、難しそうだから興味がないということではなく、会社法関係の授業を聞いたり、新聞を読んだりすると、日々新しい問題が生じている分野であり、問題解決のスキームもどんどん新しいものが考えられている、そういった創造的な分野であると思うようになって興味が湧くようになりました。
 そこで、夏のエクスターンでは是非企業法務を扱う事務所に行きたいと思い、NO&T事務所への実習を希望しました。

 しかしいざ実習の日が近づいてくると、やはり不安は大きくなるものです。
 学校では、企業法務に関係するような科目はまだ会社法しか学修しておらず、その程度の知識しかなくて2週間やっていけるのか、と思いました。
 そういった思いを抱えながら、私は8月22日を迎えたのです。

2.Two Weeks

 では次に、私が事務所で行った実習内容について説明したいと思います。
 初日。緊張最高潮。受付で名前を言い、通された部屋には既に学生らしき人が数人いました。どうやら、同じ期間にエクスターンとして実習する人が14名いるらしいのです。14人で、まずは事務所の概要説明を聞き、一人ひとり担当して下さる弁護士の先生の名前を告げられました。NO&T事務所内は、主に3つのセクションからなり、「Litigation」「Finance」「Corporate」に分けられています。私を指導してくださる先生は、Finance部門の先生でした。
 エクスターン生には、実習の期間中事務所の弁護士の方々と同様に、一人につき一個室が与えられ、そこでリサーチ等を行うことになります。
 私も、担当の先生のすぐ横の個室を与えられ、そこで2週間過ごしました。

 14名全体での実習が終わり、私も個室に戻りました。そして、戻ったと同時に、早速リサーチの指示があったのです。
 その最初のリサーチから実習が終わる最終日まで、途絶えることなくやるべき課題がありました。一つの課題に対して、検討した結果を提出すべき期限がありましたので、予定されていた実習時間を越えて課題に取り組むことも多々ありました。・・・・・・いや、多々ではなく、ほぼ毎日でした。今、手元にエクスターンシップを終えてから学校に提出した報告書があるのですが、それをみると平均実習時間は9時40分〜20時だったようです。
 これが平均ですから、日によってはもっと遅くなったこともありました。

 さきほど、各エクスターン生にはそれぞれ担当の弁護士がつく、と書きましたが、実際にはリサーチ等の課題は、担当の先生からに限らず、複数の先生から与えられました。
 私が2週間で行ったのは、@ 帳簿閲覧権の範囲・目的の具体性、帳簿閲覧権規定の文言の改正経緯、A 委任状勧誘について、委任状勧誘規則の一連の改正について、B ジョイントベンチャー会社設立と独占禁止法の問題(企業結合と独占禁止法)、C Bに関して、仮にジョイントベンチャー会社設立が独禁法に抵触するとして、その代替案の検討、D 具体的事実のもとで資本参加する場合、できるだけコストのかからない方法の検討、です。
 そして、これらリサーチを主にする実習以外にも、刑事国選事件の公判を傍聴しに行ったり、企業法務においての最新の重要判例・文献等を分析する課題を担当したり(これは、分析結果を所内ネットワークに情報提供するという趣旨)、各種勉強会(ファイナンス週例会、Legal Information Service週例会、企業法務勉強会等)に参加させていただいたりしました。

 このように、エクスターンの2週間、本当に密度の濃い時間を過ごすことができました。

3.After

 が、エクスターンが終わってから10ヶ月ほど経った今、あの2週間を振り返ってみると・・・
 「自分の至らなさ、実感」といった感じです。というのも、2年生の夏で参加したエクスターンでは、企業法務関係の知識が会社法ぐらいしかなかったのです。さきほど書きましたが、課題の中のAやB、Dなどは、主に証券取引法や独占禁止法といった分野の法律に関係するものでした。ですから、初めて読む法律を使って問題に取り組み、一応の回答を出さなければならないというのはとても大変でした。図書室に行って資料を探そうとしても、どの本がいいのか検討がつかず、手探りで考えることの連続です。
 3年生の今、証券取引法や独占禁止法を履修していますが、それらの科目を学んでいると、「あ、あのときの課題の意図はここにあったのかー」と気付かされることがあります。そして「自分は本当にゼロの状態でエクスターンに参加し、そこでの実習にあたってきたんだな」と思うのです。
 おそらく実務では、このように新しい問題に直面する機会というのは日常よくあることなのでしょう。ある問題に対してどの法律を適用するか、どう解釈するか、といったことはもともとある知識だけでは到底対応できないもので、その都度頭を柔軟にして考えなければならない、と。

 私がエクスターンシッププログラムに参加して得たものは、決して知識などではなく、2週間実習してみた経験、その場で見たこと、考えたこと、感じたことです。
 弁護士の仕事というものは想像以上に創造的であること、責任の大きな仕事であるということ、一人で考えるのではなくときにはその分野に強い仲間の助言を受けたりして最善の方法を導くことであり、そういったことは実際にその場にいたからこそ真に理解できることだと思います。
 抽象的だったイメージが具体的なものに変わったのです。

 2年生の段階でこのプログラムに参加できた事は、自分にとってとてもラッキーでした。そこでの体験が、3年生で専攻するワークショップや、講義を選択するきっかけになりました。
 確かに、まだ専門的な勉強をしていない段階での実習はきつかった面も多かったのですが、それ以上に目に見えない財産を得ました。

 NO&T事務所の若手の弁護士の方とお話ししたときに、「学生のうちから実際に働いてみる事ができるなんて、羨ましいよ」とおっしゃっていました。
 私もまったく同感です。特に早稲田大学のロースクールでは、多種多様な実習先が用意されています。これを活かさないのは本当にもったいないです。
 私が最初そうだったように、エクスターンに参加する事に対して少し不安を抱いている人もいるかもしれませんが、そのときは一時的にその感情に蓋をして、蓋をしているすきに申し込み用紙を提出してしまえば何の問題もありません。

 自分が経験していない、知らないことは、とても大きく見えてしまうものですが、いざやってみると意外とすんなりやれてしまうことが多いと思います。

 なんだか応援メッセージのようになってきたので、このへんで終わることにします。

 長々書いてきましたが、結局言いたいのは「不安だったけどやってみたらとてもやりがいがあって、大変なときもあったけど参加してよかった」ということです。


大塚 麻衣子
2004年、早稲田大学法学部中退。
同年、早稲田大学大学院法務研究科入学。