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3.将来の展望 ―MAIMENはF1チームみたいな感じです―

(1)現在の法曹の問題について

事務所入り口

――最近弁護士の就職難だとか、先輩の事務所の机を借りるだけで給料はもらわない「軒先弁護士(ノキ弁)」や自宅を事務所として登録せざるを得ない「タク弁」の新人弁護士などが取り沙汰されるようになってきました。そんな中で、今後こちらのようにロースクールを卒業した仲間達で一緒に独立する事務所が増えていくとお考えでしょうか。また、お知り合いの間でそういったお話を聞いたことはありますか。

鏡味:今のところ自分達のような形態での開業は聞いたことないですね(笑)。今後増えていくかどうかも、元々この形でやるにはある程度人生が懸っている部分があるので、そこを共有してもいいよというような信頼関係が無いとやっぱりそこまではなかなかできないですよね。もちろん、自分達はそういう形もありなんじゃないかという考えで始めているので、そういう形でやり始める人がもっといてもいいんじゃないかと思いますけど。今のところ、知り合いや耳に入ってくるところでは聞いたことがないです。

――顔見知り、という程度では難しいですからね。

鏡味:ゼロからスタートするわけですから、やはり顔見知りという程度の関係では挑めないことだと思います。自分達のような形態での開業は個人的には良い形だと思っていますが、それがどんどん増えていくかというと難しい部分があるでしょうね。
 ただ、即独という形ではなく、たとえば2〜3年既存の事務所での経験を積んだあとにロースクールの同期で一緒にやろうという話であれば、ロースクール制度ができた以上今までより増えてくるんじゃないでしょうか。

――今までは修習の同期という形での繋がりだったのが、私たちの世代になるとロースクールのつながりがありますからね。

鏡味:僕たちも、2〜3年経った後にという案もあったんです。正直、その方が安全だと思いますし。でも、それだとつまらないというか、それなら上手くいって当たり前ですし、ゼロから全部自分達でやることに意味があるんじゃないかと。それで上手くいって何年か経ってまだ残っていられたら、その時の経験とか財産というのはすごく価値のあるものだと考えたんです。やっぱり2〜3年経ってからというのは違うな、と。
 その意味ではロースクールのつながりがあるというのは大きいと思います。ゼロから作り上げるには、メンバー全員の信頼関係が無いと難しいと思うんですけど、ビジネスとは関係の無い「学生」という状態を共に過ごすことでお互いの人間をよく知ることができて信頼関係が築けるので。修習だけではそういった関係を築くのはなかなか厳しいかなと。

――即独が一番面白いだろう、と。

鏡味:まあ、いろいろ経験を積んでから集まるとそれぞれの譲れない部分とかが出てきますしね。全員でゼロから考えて方針を決めてやっている事務所よりも運営が難しくなってしまいますし、そういうのは本意ではなかったので。分からないことだらけだとしても、みんなで力を合わせて知恵を絞りだすのも楽しいですしね。それで上手くいかなければそれも良しということで(笑)。頑張ればいいじゃないか、と。

――また、弁護士が就職先が無いとぼやき、弁護士会の会長が合格者を減らそうと言っている現状については、どうお考えですか。

鏡味:就職しなきゃいけないというのが最初に来ている発想が僕には疑問です。そこまで就職にこだわったり、就職口が無いと悲観的にならなくてもいいのではないでしょうか。もちろん自分も就職という選択肢は考えましたが、弁護士という資格は就職しなくても自分で登録して仕事をすることが許されているんですから。就職する事が当たり前になっているのは、弁護士の数が増えて大きい事務所も増えて弁護士を雇い入れる事務所が増えてきた結果即独する人が減って、まずは就職というのが一般的になったというだけですし。昔は、即独する人がほとんどで、それでやってきたわけです。その時と何が違うかというと「就職することが当たり前だと思われているかどうか」という違いが一番大きい。それしかない。よく考えてみたら、独立すればいいじゃないか、と。修習が短いから昔とは違うと言いますがロースクールもありますし、さっきも言ったように修習の過ごし方次第では充分ノウハウを吸収できます。就職難というのは、就職しなきゃ始まらないというのが前提になっているフレーズだと思いますけどね(笑)。

――即独するとなると、お客さんがついて営業が軌道に乗るかどうかというのが大きな不安要素の一つになると思います。その点に関して、鏡味さんが何か働きかけをしたということはありますか。

鏡味:事務所を開く前に積極的に働き掛けたということは無いです。ただ、事務所を開いた時にどういうことをしていればお客さんが来てくれるかというのは、尾西と企画を練る段階でかなり詰めていました。それが功を奏して実際に仕事が来ているので、対策をしてイメージをちゃんと持って企画を練れば充分集客が出来るんじゃないかなと思います。

――仕事を取ってくるノウハウや方法論を皆さんで検討された、ということでしょうか。

鏡味:取ってくるというよりは「自分が依頼者・法律問題を抱えている身だったらどうやって事務所に行き着くかな」というのを考えました。僕らの世代だと間違いなくインターネットが最初に出てくる。Webサイトについては、事務所の情報が分かりやすくて、敷居の高さも感じないし、聞きたかったことや知りたかったことが見れば分かる、という点にこだわりました。ここならちゃんとやってくれそうだと思ってもらえる内容にしよう、と。あとは須坂でやることが決まってからは、弁護士事務所が元々無いというのと人口も少なく都会ではないということで、紙媒体も結構重要なんじゃないかと考えました。なのでリーフレットを作って配ったり、『広報すざか』という地域限定の広報誌があるんですが、そこに広告を載せてもらったりしました。やるべき事を決めてそれをきちんとこなせば仕事が来ないはずはない、と考えていました。
 あと、長野県ではホームページを出している事務所が少ないんですよ。これを言ったら怒られてしまうかもしれませんが、長野では広告自体一切ダメだという時代があったんです。それが一部自由化されたんですが、それでもまだ弁護士は広告を出すべきじゃないという考えの人が多いんですWebサイトも広告の一環なので、かなりそういう意見も多いです。でも自分達の感覚としては、Webサイトもチラシも宣伝で積極的に客を引くために出すというよりも、問題を抱えている人が解決策を探すための情報を提供するという範囲で出すものだと思っています。そこの線引きというか棲み分けをまだあまり分かってもらえていないのが悲しいです。