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(14) 森・濱田松本法律事務所

はじめに

 今回は、森・濱田松本法律事務所に訪問させていただき、松村祐土弁護士と青山大樹弁護士に、企業法務の実務をはじめとした、さまざまなお話を伺ってきました。


1.事務所の概要・全般について

――はじめに、事務所の沿革について簡単にお聞かせください。

松村:森・濱田松本法律事務所は、2002年に、森綜合法律事務所と濱田松本法律事務所が合併して誕生しました。森綜合法律事務所というのは、1940年代頃から訴訟・倒産・企業統治といった国内企業法務を中心に活動しており、1990年代から2000年代の当初期にかけて、総合的なM&A注1 、ファイナンスにも得意分野を拡大していました。一方、濱田松本法律事務所は、1970年代に、その後最高裁の判事となる濱田弁護士と松本弁護士の2人が開設した、いわゆる渉外事務所の先駆けで、キャピタルマーケッツの案件などの国際金融業務を中心に、取り扱う渉外事務所でした。その2つの事務所が統合したというのが沿革です。

――事務所の活動理念についてお聞かせください。

松村:「依頼者のために最善を尽くす」ということがもっとも基本的なものです。これは、事務所自体の目標というよりは、事務所に所属する弁護士共通の志であると私は考えています。各弁護士が、自立したプロフェッショナルとして切磋琢磨しながら、チームを作り、クライアントのニーズに応えていくというのが、我々の活動の根本的な部分となっています。
その他に活動理念として挙げられるものとしては、人材育成があります。「知性とバランス感覚に優れた人材の育成」というもので、このような人材を育成することは、クライアントの最善の利益の追求という第一の目的にも資することになります。
もう1つ挙げるとすれば、「社会への積極的な貢献」というものです。弁護士とは、国から誰からも監督されず、その独立した自治を認められている数少ない職業です。そのような立場を最大限に生かして社会へ貢献するということが、弁護士としての地位を有する者に課せられた使命だと考えています。
これら3つが、我々にとって、極めて大切な価値理念となっています。

――森・濱田松本法律事務所では、各業務分野について研究などを行う、「プラクティスグループ」が組織されているとお聞きします。その活動の趣旨や内容などお聞かせください。

青山:「プラクティスグループ」とは、森・濱田松本法律事務所の内部での勉強会の1つです。事務所内部の勉強会には大きく分けて2つの種類があります。ひとつはレクチャー形式で誰か一人が前に立って講義をするスタイルのもので、もうひとつは、ディスカッション形式で、その分野に興味がある弁護士が集まって、最先端の案件の話や、法律実務上の論点を議論するというスタイルのものです。「プラクティスグループ」というのは、後者の、ディスカッション形式の勉強会です。これを行っている理由というのは、一言で言うと情報の共有と共同研究のため、ということになると思います。ひとつの分野を専門とする弁護士といっても、経験もそれぞれで、一人の弁護士が当該分野の案件全てに関わることもできないわけですが、その分野の最先端の情報というのは、全員が共有しているというのが理想です。そこで、案件に関わった者は限られるけれど、それを全員に報告して共有をし、かつディスカッションを通して、その案件では担当弁護士はこう考えて処理したけれど、別の見方はないか、そのような案件の経験を他の事案でも応用して生かしていけないかということを全員で議論すること、そして、全員がその最先端の情報・議論を共有している状態を維持し、実務を発展させていくことが望まれるわけです。

松村:そもそも弁護士というのは、個々人がプロフェッショナルです。依頼者も法律事務所に依頼に来るというよりは、そこに所属する弁護士に依頼に来るのです。この事務所のように大所帯にならずに、弁護士は1人で仕事をしても当然よいわけです。実際、個人事務所が日本中にたくさんあります。それをあえて大勢の弁護士でやろうというのには理由があるのです。1人ではできないことを皆で一緒にやろう、ということです。自分の経験したことがないことや勉強していないこと、つまり知識がないところをお互いに補完し、アイディアを出し合ったり経験を生かし合ったりしながら仕事することによって、クライアントから求められているニーズを満たそう、というわけなのです。それが複数でやっている共同事務所の元々の存在意義です。そのためには、情報を共有して、ノウハウだとか知識だとかあるいは経験というものにアクセスができるようにすることが必須であり、我々も、そのための試みをいろいろな形でやっているのです。その一つの形が「プラクティスグループ」であり、勉強会を通じて経験や知識、ノウハウというものを共有していきましょう、そして仕事に生かしていきましょうというものなのです。

青山:若手の弁護士の経験の場としても「プラクティスグループ」には意義があります。事務所に入所してから少し経つと、若手の弁護士にも、「プラクティスグループ」で報告をして欲しいといった話が回ってくることがあります。そうすると、大勢の弁護士の前で発表を行い議論をリードすることになるわけですが、これは、事務所の外部に出てプレゼンテーションをする前の練習の場所にもなる、という感じですね。


注1 Mergers and Acquisitionsの略。企業の買収・合併を意味する。