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――かつては日本企業が海外に進出するというケースが多かったと思うのですが、国際化の進行とともに、今度は、海外の企業が日本に進出するというケースが目立ち始めています。このようなケースにかかる案件が増えてきているのではないかと思うのですが、こうした変化に対応するために求められることは何でしょうか。

松村:一つは異文化についての理解です。その文化のことを全て知識として持っていることまでは必要ないかもしれませんが、言葉や国が抱えてきたバックグラウンドが違うと、我々が常識だと思っていたことが通用しないことがある、という考え方自体がとても重要だと思います。違う言語や文化の人たちがお互いにどうやって理解・意識・ゴールを共有できるかは、このような考え方を前提にしてはじめて見えてくると思います。日本企業が外国で企業を買収するとき、逆に外国の国が日本企業を買収しようとするときに、自分たちの常識や文化だとかいうものを前提に議論しようとすると、最後まで誤解が残ってしまったり、実は理解しあえずゴールが共有できなかったりすることがあるわけです。やはりそこは違うことを前提に、違うものとわかった上で、どのように理解を共有していくかに努めることが重要だと思います。私自身、外国に実際行った経験は大きいと思っています。
 私はアメリカの学者や弁護士としばしば話をする機会があるのですが、彼らから、最近日本人は内向きになっていて、特に若い人たちは、日本のリーガルの市場が成熟し国内でも十分な法的ニーズがあるからか、昔は外国に行って新しいものを吸収してこないと仕事にならないという事情があったからか、昔と比べて海外に目を向ける人が少なくなっているのではないか、と指摘されることが少なくありません。皆さんもぜひ、学生の間に、短くてもいいので海外に行き、その文化に触れて、異文化の人たちがどのようなことを考えているのかを学び経験してほしいと思います。そういうものがクロスボーダーの案件に携わるときにも生きてくると思いますし、国内の案件、たとえば日本企業同士の合併であっても、グローバル化の進む現在では投資家や取引先の関係から、アメリカ、ヨーロッパ、アジア各国の法律に直面することもあるのですから、そのような経験が生きてくるのです。たとえ英語を使って交渉しなくても、そういった異文化との接触は必ずあると思いますから、海外の文化に触れるという経験をぜひしておいてほしいと思います。

3.法曹養成制度について

――能力や資質といった観点から、新司法試験合格者と旧司法試験合格者が比較されることがありますが、実際に実務にあたるなかで、両者の特徴・差異といったものを感じることはありますか。

松村:まだ判断するには時期尚早かと思います。ただ、今までの3年ぐらいを見ている限りでは、全く差異を感じません。旧試験合格者であろうと新試験合格者であろうと、それぞれ個人として素晴らしいものを持っているし、場合によっては欠点もまた持っているということです。試験のカテゴリーとしてそれぞれこういうメリット、デメリットがあるというのは、現時点では感じていません。

青山:僕も全くないですね。後輩が新試験合格者なのか旧試験合格者なのか知らないケースも多いですし、あまり意味を持つ区別でもなくて、ただ同じ弁護士として同一資格者ということに尽きると思います。

――法律の知識といった点で、旧司法試験組に比べ新司法試験組は劣るのではないかという意見を聞いたことがあるので、お二人のご意見を伺って少し安心しました。

青山:法律の知識の量そのもののレベルでいうと、新司法試験の人も旧司法試験の人も、事務所に入所してきた時の知識は、実務においては全く足りないですね(笑)。実務に必要な知識が100だとして、入ってくる時に持っている知識はせいぜい5か10だとすると、仕事をしていく間に残りの90、95を埋めなければならないという点では一緒なのですね。

松村:我々の仕事は知識がなければ話にならないので、法律家であり続ける限り勉強を続けていかなければならないし、また、知識を持っていたとしてもそれが使えなければ、仕事にならないわけなので知識の使い方も知っていなければならない。勉強に対する姿勢や、知識の使い方を知っているということは、法律家にとって一番大事な資質です。法曹養成においては、単に知識を詰め込んだり、知識を持つということだけではなくて、どうやって知識を得ていくのかという知識習得のプロセス、それから、その知識の使い方、この2つを身につけることがとても大事だと思っています。旧試験の場合には、論文試験なり口述試験なりを突破するための勉強を通してそういったものを培っていくことになっていたし、ロースクール制度では、ローでの教育を通してそういったものを磨いていくということになっているわけですが、大事なことはそのプロセス自体なのだと思っています。