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<3> 双日株式会社

今回は、早くから企業内弁護士(いわゆるインハウス・ローヤー)を導入し、幅広いビジネスを展開する総合商社である双日株式会社の法務部を訪問し、お話を伺ってきました。


1 企業の法務部とは、商社の法務部とは

――本日は訪問を受け入れていただきありがとうございます。 今回は法務部の花井正志部長、菅沼博文アシスタントマネージャー、インハウス・ローヤーとして勤務されている萩原浩二弁護士にご協力いただきます。どうぞよろしくお願いします。
早速ですが、まずは企業の法務部がどういったことをやっているのか、その機能ないし業務の内容についてお聞かせください。

菅沼: よく言われているように、企業の法務部の役割は、予防法務、治療法務、戦略法務、その三つの重要な柱から成り立っています。
 予防法務とは、取引に存在するさまざまなリーガルリスクを発見、分析そして排除または最小化することです。予防法務としての代表的な業務としては、取引 スキームの検証や契約書を作成するにあたり法的な視点から検討し、スキーム自体もしくは契約文言の修正を加えていくことが挙げられます。
 治療法務とは、企業として業務を運営していく中で、訴訟や仲裁、もしくは回収も含めた紛争解決という法律の専門知識が一番必要になってくる分野を担うことです。これも法務部の重要な役割です。
 戦略法務とは、一例を挙げるならば敵対的買収防衛とは何か、その導入の効果は、具体的な方法はということを法律の観点から分析して、それを経営に対して提言していくことです。あるいは、会社法が変わったことでできるようになった グループ関係会社の組織再編に関して、会社としてこうすべきなんじゃないですかと提案していく。これらが戦略法務の代表的な例です。
 さらに加えますと、当社にはコンプライアンス部というものがありますが、社員向けのコンプライアンス対応について、事前・事後を含めて法的な側面から支援していくこともあります。
 総合商社は特にリスクの多い業界ですが、自社で解決できるリスクというのが必ずしも多くないので、常にリスクをいかにヘッジもしくはアロケイトできるかを念頭においておかなければならない。そういう中で、法務の知識や経験なり、法務のスクリーニングを通してリスクをミニマイズした上で、これだけの利益があるのだからこのリスクをとってもいいという提案を行なっていくということも法務部の役割だと個人的には思っています。

花井: 補足すると、商社の商売も単に物を売ったり買ったりだけではなく、ファイナンスや税務等も含めいろいろな要素を組み合わせて、一つのビジネスに仕立てていく。取引の最初のきっかけは営業部門にあるのかもしれないが、それをつくりあげていく過程で、法務、財務、経理などの職能部門が関わる。その中で、結構主体的にこの過程をコントロールするのが法務なんです。

――監視監督という側面を持っているんですか。

花井: 監視というより、ビジネスをつくりあげていく上で、法規制だけではなく総合的に機能する形にするという点が重視されます。その過程をコントロールする機能が法務の要であります。
 例えば、金融機関とか証券会社などのいわゆる金融をやっているところは、業界として取引規制がきちっと働いているいわゆる規制業種です。
 一方、商社の業種業態というのは通常の取引における法規制を除き商社を対象とする特段の取引規制はありませんので、法律に抵触しない限り多種多様な取引の形が創造できることになります。柔軟な発想で、いろんなビジネスをつくりあげていく中心にいるといってもいいかもしれません。

――先ほどコンプライアンス部への支援のお話がありましたけど、法務部の仕事の相手方についてお聞かせいただけますか。

菅沼: 原則としては、各営業部門や各職能部門ですが、取引スキームが複雑な契約交渉や債権回収の場合には営業や弁護士とともに当然直接客先に行くこともあります。

――昨年のエクスターンシップの経験から、営業部門と法務部を含めた職能部門との間には多少距離があるように感じたのですが、営業部門の方々の信頼をいかに獲得していくか、何か工夫はありますか。

花井: 二つあると思います。一つは営業部門からの提案が、そのままでは問題があるときに、ただ単にダメだというのではなく、代替案をいくつか提示する。その方がリスクが少ないしいいと納得してもらえれば、営業部門は法務部を評価する。
 もう一つは、営業部門が契約書を作ったり、相手と契約や法律上の問題を踏まえて交渉をするのに限界があるので、その際はわれわれも一緒に走ります。これもまた営業から感謝されるんです。
 だから決して、法務部が頭でっかちでやかましいと思われているわけではありません。

――それでは、特に商社の法務部の特徴と面白さについてお聞かせくださいますか。

花井: 商社のビジネスはある意味で一番先端を走っているので、法律上の規制がまだ及んでない世界に常にぶつかっていくわけです。このとき、法律はこうなっているとか、過去の判例はこうだとはいえない世界にいるわけですから、自らの信じるところにしたがってあるべき姿を推し量りつつ進めることになります。判断の合理性、納得性や普遍性がポイント。場合によっては先例を作る目的で意図的に訴訟をすることもありますし、判例を踏まえ新たに法制化していく過程で協力を求められることもあります。
 自分たちが常に先端を走っていて、法律やケースが後を追いかける。そういう過程に関与できることもあるため、商社ビジネスに係わる法務は面白いんです。
 例えば、立法化のひとつの方法として経産省の研究会などで立法の必要性を訴え、商取引をする上での法制化が急務なんだなということで、法務省が立ち上がるということもあると思います。
 




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