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3、税務実務の現状

(1)弁護士の役割

――租税訴訟に徐々に変化が起こりつつあるというお話、ありがとうございました。先ほど、争訟手続よりも、前倒しの事件が増えてきているというお話がありましたが、この点でも変化しているということですか。

鳥飼:前はあまりなかったんですけど、今はそれが入ってきてるというので新しい領域、従来税理士のやってきた領域にわれわれ法律家が入ってきたということです。

――訴訟以外にも、弁護士の役割が増えてきたということでしょうか。

鳥飼:税理士はあくまで実務で申告してるからね。実務から離れると更正処分受けてお客さんから怒られるから、ゆがんだものであってもそれに従ってやってきた。
 ところが、先ほどのグローバル化の中で予測可能性を考慮して、法律に基づく税務を構築しましょうという声が出てきた。そうすると、税理士は実務の中で構築された通達を中心とした実務でやってるから、ゆがみがどうかなんてそんなゆとりがない。それを矯正するにはわれわれ法律家が入るしかない。法律家の役割が少しずつ増えてきて訴訟になる以前の所から少しずつ関与が深まっているという当たり前のことが今起きてるというのが実際ですね。まだ弁護士の役割があまり認識されてないけど、少しずつ認識されるだろうと予測はしてるのだけど。

――今までそうなってこなかったのはどういうわけでしょうか。

鳥飼:今までの実務は行政官が強かったのですよ。税法領域でいうと、税法作るのは財務省の主税局だよね。では、行政官は作ったものに従うかというと、税法でのルールを政省令で少し変化を与えることができるし、政省令だけだと網の目が広いから通達という形で行政解釈を示すわけでしょ。この通達中心で動いてるのが税務実務。行政官の思うままの税法秩序があって、従来の裁判所も実態としてそれを認めてきたんですよ。もちろん、納税者の中には悪いやつもいるから、いい面もあるんですよ。
 ただ、まっとうな人が影響を受けている面があって、その副作用をどうするかということが問題になっている。たとえば、企業が同じ経済目的を達成するにしてもいろんな選択肢がある。売買契約以外にも、他の契約、例えばリース契約だって、様々な形態によって目的が達せられる。それによって税金額が違うんですよ。企業は税金が安く済む契約形態を選ぼうとするんだけど、税金が安い形態はけしからんと言って、国税が更正処分を打つ。通達をかさにきて、様々な手法で。このような法律から外れたものも今まで通用してたんだけど、裁判所が法律から外れたものは駄目だと裁量権に枠をはめてきて、その結果、更正処分で裁量の行き過ぎたものは国税が負けとそういう形を裁判官がとってきています。だんだん裁判所が考え方を変えてきていて、租税法律主義という法律中心で税法を運営しましょうという考え方に変わってきたから、その影響で法律の専門家であるわれわれ弁護士が入れるようになり、弁護士の領域が広がってきているという状況があるのかなと思います。

(2)開拓の困難

――そうすると、事務所内で税理士と弁護士が一緒に仕事されてますが、その役割分担にも変化がでてきたと。

鳥飼:確かに、実際に税理士がやってきたけどわれわれ弁護士が全然関与していなかった仕事、そこに訴訟みたいな形で少しずつ関与して、少しずつ職域を広げてきたんですよ。
 だけど、実は、まだ、広い空間の中で点にもならない存在なのですよ。例えばこれだけの広いところに税法実務の領域があるとするじゃない。われわれ弁護士が今まで入ってきた領域は、まだどこにも見えない。もうすぐ法律家にとってすごく大きな領域になるという時代は来てるんだけどね。

――まだ点にもならない?

鳥飼:われわれを使ってくれというアクションを弁護士界も起こしてないからね。われわれの現状は依頼されたものを消化するだけです。われわれ弁護士を使わなきゃだめですよ、と積極的に提案するところがまだまったくやれてないんですよ。

石井:われわれ弁護士にとって、税法はまだ未知の分野ですね。経済的な取引の裏側に税法の網が拘ってくるんですけど、従来税法というマターで問題になっているのは、ほんとに一部で、まったくカバーしてないですよね。だから、そういう誰も本に書いていないことや誰も意識してこなかったこと、しかも法律家が入ってなくて法律的な分析ができてないことがごろごろ転がってるわけです。
 少し目を転じて、外国の税務実務ですと、法律事務所に意見書をとってあらかじめ準備するっていうプラクティスがあるみたいなんですよ。なんでかって言うと、要件の判断に法律事務所の意見書を事前にとってるかを考慮される可能性がある。日本は進んでないけども、今後はそこまで進むかも。

鳥飼:判決しだいですね。いずれ進むよ。専門性ある専門家に判断を仰がないのもおかしいから。

石井:会社もそう言ってますよね。

――現状では開拓が困難なのは、税務特有の理由はあるのでしょうか。

鳥飼:まだまだ税理士が法律家入れないタックスプラニングをやってるのですよ。あるいはその先の調査だったり、更正処分打つぞってときも、審査請求やるときも、彼らがやってることが多い。もちろん会社の方が法律家入れたいと言えば入れるけれど、弁護士を入れると税理士の領域がせばまると勘違いをしている。

――なかなか協調関係に行かないと。

鳥飼:われわれが積極的に入り込んでいかないとだめだよね。待ってるだけじゃなくて。ただ、われわれは忙しいから、他人まかせで、あなたの方から言ってくださいじゃ、だめですよね(笑)