あさひ法律事務所

 

 今回は、あさひ法律事務所に訪問させていただき、法科大学院出身の弁護士のである畑井研吾先生と宮地祐樹先生に、お話を伺ってきました。先生方には、学生時代や実際に実務に就かれてからの日常や、仕事のやりがい、今後のキャリアプランなどをお話しいただきました。法科大学院生にとって、数年後の自分たちの目指す姿である若手弁護士の先生方のお話は大変励みになるのではないでしょうか。

 

――本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
 まずはじめに、法科大学院を修了して弁護士になるまでについて伺いたいのですが、新司法試験を合格した後の就職活動について、差し支えない範囲内で体験談をお聞かせいただけますか。畑井先生からよろしくお願いします。

畑井:私の時もすでに就職難ということが言われ始めていまして、就職活動を開始する時期については、周りの友人は早かったですね。合格発表前、新司法試験が終わった直後くらいから事務所説明会や事務所訪問に応募する友人が多かったように思います。
 しかし、私はそんなに出足が早い方ではなかったので、インターネット上で募集を開始している事務所の説明会や面接に何件か申し込むくらいでした。本格的に動いたのは合格発表の後で、合格発表の後に個別訪問の受付を始めた当事務所に応募しまして、そのまま面接に進んで内定というような流れでした。それほど早くから就職活動を開始した感じではなかったですね。

――就職活動で注意したポイントなどはありますか。

畑井:注意したことは特になかったと思います。合格発表前に関しては場馴れのために出していたというようなところがありました。

――書類選考について、書類の書き方などで何か工夫をしたことなどはありますか。

畑井:それほど工夫をしたという記憶は無いですが、時間をかけて練り上げて書いている友人も大勢いたので、参考のために見せてもらい、少し自分のものに取り入れたりはしていました。ただ、合格発表前は書類選考で落とされることが多かったです。

――ありがとうございます。では宮地先生はいかがでしょうか。

宮地:私が就職活動を始めたのは合格発表後なので、9月中旬ぐらいだと思います。

畑井:9月11日ですね。

宮地:それまでは一切情報も収集していなかったですし、説明会等にも行ったことがありませんでした。今考えてみたら何もしなさ過ぎたと思いますが、当時、周囲には札幌市内で就職しようという人が多く、すぐに就職活動を始めるという空気ではなかったので、自分もその空気に乗ってしまっていたのと、まさか自分が試験に受かっているとは思っていなかったということで何もしていなかったのだと思います(一同笑)。ところが、結果を見たら受かっていたので、すぐに始めたという感じです。

――就職活動で注意したポイント等はありますか。

宮地:私の場合は、本当に興味がある事務所にしか応募しないと決めてやっていました。なので、今当事務所におりますけど、この他にも2つほどしか応募していません。それも、当事務所の面接の時に、他事務所にも応募してみてはどうかと言われたことで調査の手を広げ、興味を持った他事務所にも応募したという感じです。多くの事務所に応募していると、その事務所の書類で何をどのような趣旨で書いたかがわからなくなってしまうし、面接で良いことを言おうとしてもよくわからなくなるんじゃないかな、と思いまして、それだったらやりたいことが明確にある、あるいは、ここに行きたいという理由が明確にある事務所にだけ応募して、それをそのまま伝えていったほうが良いのではないかというような考えで、そのような進め方をしていました。

――有難うございます。お二人は対照的な就職活動をしていたというように思われますが………。

宮地:仕事でも対照的で(一同笑)。

畑井:ただ、私もそれほど多いわけではなくて、友人の中には10、20という数の事務所訪問に応募している人もいましたが、私は多分5、6くらいだったですね。

――その数を聞くと、そんなに変わらないですね。

畑井:合格発表前には就職活動にそれほど力を入れていないという点は共通していると思います。

――では、就職活動をする上での自分の強みは何であったのかということと、それと関連して、ご自身が、あさひ法律事務所に採用された理由について、先生方のお考えを推測で結構ですのでお聞きしたいです。

宮地:試験の時からそうだったと思うんですけど、私の場合、こういう場で「緊張」はしても「物怖じ」はしない、また、ある意味適当なので、わからない質問に対しては正直にわかりませんと言えたし、わかることは自信を持って言うし、というところで、変に形式上のきれいなことを言ったりしなかったことは良かったのかな、と思います。

――では、一方で畑井先生はどういった……

畑井:2人の性格は対照的と言えば対照的なのですが、就職活動に関しては私もそれほど悩まなかったですね。受け答えに関しては、自分の強みをアピールすることより、弱みを見つめ、きちんと説明ができることが大切なのではないかと思っていました。積極的に強みをアピールというのはあまりした覚えは無いような気がします。
 これは個人的な見解ですが、応募する全員がそれぞれ自分はこんなに優秀なんだとアピールしているわけですから、採用する側にしてみれば、よほどの強みがない限りアピールにならないのではないかと思いますので、それよりは、率直に、自分の良い点も悪い点も説明するほうが良いのではないかと思っていました。
 例えば、私は合格時に合格者平均年齢と同じ年齢だったのですが、いわゆるストレートで合格した人よりは年齢が上ですので、この点は弱みといえるのかもしれません。
 しかし、この点については、私は学部時代ずっと、所属していた大学の合唱団の活動をすごく熱心にやっていて団長も務めており、その結果旧司法試験の勉強を開始したのが大学4年になってからだったということが主な理由で、私は、合唱団での活動を通じて得たものの大きさからすれば、多少合格時の年齢が高くなっても良いと考えていました。面接では、そういったことを率直に話すよう心がけていました。

――私のような年齢の高めの学生には大変励みになる話です(笑)。では、次の質問に進みたいと思います。新司法試験に合格しても弁護士事務所への就職活動は厳しいと聞いています。法科大学院在学中に将来の就職を意識して、何かしていたことがあれば、教えていただきたいと思います。

畑井:それが、全然していなかったですね。私の周囲でも、エクスターンシップとかサマークラークに何名かは行っていましたが、私は全く利用していませんでした。
 視野や経験を広げるという意味でエクスターンやサマークラークに行くのは良いことだと思いますが、あくまで法科大学院時代は、新司法試験のため、といったら語弊があるかもしれませんけど、法曹になるために必要な実力をつけるための期間ですので、真剣に勉強をしていれば、就職活動については気にしない方が良いのではないかと個人的には思っていましたし、その考えは今もあまり変わりません。

宮地:私も一緒で、私自身は特に何も準備していなかったですね。今考えてみても、何をしていれば良かったかわからないというのが本音です。ただ、唯一言えることは、修習中に周りを見ていると、就職地によっては採用活動において以前からの人間関係が非常に重視される場合もあるようで、ロースクール時代からの実務家教員とのつながりを大事にする人や、エクスターンやサマークラークでしっかりした人間だというところを見せた人が割と有利に扱われているということは感じましたので、そのような地方での就職を考えている場合であれば、学生時代から法曹界での良好な人間関係を作っておくことは大事なのかな、と思います。

畑井:なるほど。東京だとあまり影響しているような気はしないですが、そういうこともあるかもしれません。ちなみに私は実務家教員と割と仲が良かった方で、よく飲みに行ったりもしていましたが、就職活動にはなんら影響がなかったですね。

――畑井先生は、今から当時を振り返ってみて、今思えば就職にこういうことをやっておけば役立ったんじゃないかな、というようなことはありますか。

畑井:就職に限らず、視野を広げるためにしておくべきことはあったかもしれませんが、就職のために、ということに限定するのであれば、本当に全くないですね。
 これはあくまで個人的な考え方ですが、将来の就職活動を有利にするためだけに法科大学院在学中から色々と行動するのは、実務家の側からしてもあまり好ましく映らない気がします。やはりやるべきことはその段階段階で違うと思うので、真剣に勉強している中で、こういうところが疑問なのですが実務家の立場でどう考えますかというスタンスで質問をする方が、結果として好ましい印象を与えるのではないでしょうか。

――有難うございます。では、次の質問に移りたいと思います。事務所選びにおいて他の事務所や弁護士以外の選択肢(法曹三者でも、それ以外でも)というものがあったでしょうか。それに加えて現在の事務所を選んだ決め手があれば、それもお聞かせ頂きたいのですが。

宮地:私は、弁護士事務所では当事務所が一番良いと思ってずっとやってきました。元々、一般民事も広く扱っている自由な事務所として聞いていたことと、実際の面接で多くの弁護士に会い、色々な空気を味わい、その上でやっぱりここがいいなと再認識したというのが、一番大きいところですね。並行してほかに2つ受けたところもあったのですが、やはり当事務所の雰囲気が自分には一番合っていると感じました。ただ、修習に行ってからは、弁護士じゃなくて裁判官、検察官と関心が移り変わる時期もありました。それでどうしようかな、なんて言っている時に、当事務所の弁護士とお会いする機会があり、そのときに、やっぱり自分にはこの事務所だなと確信し、悩みも吹き飛びました。

畑井:まず、法曹三者というところで言うと、弁護士というのはほぼ決めていましたね。少しだけ、裁判官を目指すこともできるのではないかと考えたこともありましたが、私としては依頼者の味方になって活動する弁護士の方が、公平な判断権者である裁判官よりも性に合っている気がしますので、あまり迷いませんでした。
 事務所選びの決め手ですが、まず、幅広い業務ができるところに入所したいというのは決めていました。贅沢な望みかもしれないですけど、企業法務から一般民事、刑事事件も全部できるところが良いと思っていて、まさに、あさひはそういう事務所だったので、非常にいいなという風に思っていました。幸い、応募してからそのまま最終面接まで進んでいたので、結論が出るまでは、他には特に応募しないようにしておりました。ですから、結局面接を受けたのはあさひだけということになりますね。

――新司法試験に受かって修習に行った上で、法曹三者以外にキャリアを求めていく方というのは周りにはあまりいらっしゃらないですか。

畑井:インハウスロイヤーになった人は知っていますが、私の周りでは法曹三者のどれかを選んだ人しかいないですね。

宮地:一人、医師免許を持っている方がいて、その方は、医師の立場を守るために法律的知識を身に付けたいとの考えで司法試験を受験されていて、いずれ病院に戻ることを考えているとおっしゃっていました。

――有難うございます。続いての質問ですが、弁護士となってからあさひ法律事務所では新人弁護士の教育にはどのようなものがありますか。

畑井:基本的にはOJT(On the Job Training)ですね。どこの事務所でも、よほどの大手は別として、座学のみの研修期間を設けているところの方が少ないと思います。当事務所の場合、各パートナーに対し特定の担当のアソシエイト弁護士が決まっているわけではないので、全てのパートナーから個別に事件の配点を受けて、そのパートナーと共同で処理することになりますが、事件を配点するにあたって、パートナーそれぞれが、新人だからということで、比較的わかりやすい事件だとか、法律的におもしろい事件だとかを選んでくれているというような、そういった配慮は感じます。
 その他は、研修という名目ではないのですが、所内の勉強会が割と頻繁にあります。それが研修の一環と言えば一環なのかもしれないですね。例えば、早速今年、我々新人2名が交互に報告者になって労働法の勉強会を開くという企画をやっていただいています。そういう機会があると労働法の基本的な判例はしっかり調べなければなりませんので、OJTを基本に、こうした勉強会等で知識を補完しております。  あとは、質問をするとどの弁護士も非常に親身に答えてくれるので、仕事をしながら仕事を覚えていくという感じですね。

宮地:大体一緒ですけれど、ロースクールや修習中のように、出した論文が返却されないということはなく、訴状でも準備書面でも書かせていただいて、それに対して必ず、内容をチェックして、Wordの変更履歴やコメント付きで返却してもらえます。最初の頃は自分の字なんか残ってなくて真っ赤な文章が返ってくる感じですけど、そこまで徹底して見てくださるということで、書面の作成という点で非常に勉強になっていると思います。あとは、依頼者との対話もそうですし、証人尋問もそうですけど、自分の思うままにやってみていいよ、という感じで自分の裁量でやらせていただくこともあります。実際にやってみると、あそこが駄目だったなって自分自身痛感するわけですけど、自分が感じたミスは、後でうまい具合にフォローしてくださるので、ミスを恐れずに、自分の考えで活動する中で学んでいけるかな、というのはあります。

畑井:先ほども話が出ましたが、事務所で非常に幅広い案件を扱っているので、事務所の仕事に対応していくだけで、自分の幅が広がっていくような感覚でおります。
 入所してから今までの数ヶ月の間でも、株式分割の相談や、大型の契約書のドラフト、取締役の行為の差し止め請求等の企業法務系の仕事もあれば、交通事故の被害者側や労働事件の労働者側の立場での訴訟の仕事もやりました。労働事件については、使用者側もやっております。そういう風に仕事を一個一個やっていくだけでもう相当な経験を積めているというのがうちの事務所の最大の特徴ではないかと思います。

宮地:うちの事務所は新人でも個人で持ってきた仕事は自由にやっていいんですね。幸いにも、私と畑井はまだ半年くらいですけど、個人のクライアントからの依頼をいただくこともあるんですが、それをやる中でももちろん放りっぱなしではなく、その都度話を聞いていただいたり、相談に乗っていただいたりしています。自分だけでやっていてもとんでもない結論にはならないように、うまい具合にフォローの道を作ってくださっているので、非常に勉強になっていますね。弁護士だけの合宿というものもあり、そのようなときは全体の場で相談に乗っていただくこともできます。

――では続いては弁護士としての日常について伺っていきたいのですが、先生方は仕事と私生活の両立はできていらっしゃいますか。

宮地:はい、基本的にはできていると思います。ただ、刑事事件が入ると、多少苦しくはなってしまいます。被疑者・被告人の精神の安定のために土日であろうと毎日接見に行く必要がある場合もありますし、また、平日でも他の案件で遅いということはあります。ただ、自分の時間が全くないと感じることは今のところありません。

――学生の立場からすると、刑事事件が大変である、というのはなんとなくはわかっても、具体的にイメージするのが難しいのですが、どのような点が他の事件と比べて大変なのでしょうか。

宮地:まず、そうですね、期限があってその中でやらなければいけないことはいくつもある、というのが一つと、その被告人や被疑者の生い立ちや人間関係によっては,色んなところに弁護士がやらなきゃいけないことが派生する場合があるのが実際です。どこまでやるべきで、どこまでやっていいのかというのは弁護士個人が判断しなければいけないところですけど、例えば,身寄りがない被告人が逮捕・起訴され、実刑がほぼ確実だという時に、家の契約関係の処理はどうするか、家の荷物の整理はどうするかという問題が生じる場合もありますし、あるいは、情状証人や身元引受人の確保が容易ではない場合もあります。言ってみれば、刑事弁護人がやるべきことが際限なく広がる可能性もあると。さらに、不起訴を狙うのであれば、それを長くて23日の間にやらなければいけない,という制約もあります。その上で被疑者、被告人の精神的な支えにならなければいけないような場合もあるので、心身ともに疲れる時はあります。

――有難うございます。では、続いて、普段の一日の標準的なスケジュールについて伺ってもよろしいでしょうか。

宮地:大体、他のクライアントが動き出すのが9時くらいなので、遅くても10時には来ようということでやっています。終わり時間は全く決まっていなくて、7時8時に帰れることもありますし、11時12時になる時もあります。仕事の後に飲みに行く予定があれば、時間を調整することもあります。

――この点、畑井先生はいかがでしょうか。

畑井:私は家が事務所と近いので、終電を気にせず遅くまで事務所に居てしまうことが多かったりするのですけど、私生活がないという風な感じは全然ないですね。 仮処分の時や、刑事と重めの準備書面の提出期限が重なった時など、2時3時まで残ったこともありますが、平均すると10時くらいには帰る感じですね。逆に、友人と約束があるときなどは、かなり早く帰ることもあります。

――基本的には仕事と両立して生活ができているとお考えになっているということでしょうか。

畑井:当然仕事の期限はありますが、全て自分で時間をコントロールできるので、仕事と私生活を両立するというよりは、あまり両者を区別する必要がないというイメージですね。例えば、人と会う約束があって、それが夜6時からならば、その時間に事務所を出ればいいということになりますので。

宮地:そういうことができない事務所ではないってことですね。

――1週間というスパンで見た場合、一般的な企業では土日が休みでというところが多いと思うのですが、弁護士というお仕事をなされる中ではほぼ毎日事務所の方にいらしているという状況でしょうか。

宮地:大変な時は土日でも事務所に来ることはありますね。ただ、仕事量には波がありますので、その波を越えれば土日もしっかり休むこともできています。

畑井:私の場合は土日に来ることも結構多いですが、土日に仕事をしなければ終わらないというよりも、特に用事が入っていない土日に事務所に出て仕事を片付けておこうという理由のときが多いですね。

――それも自分でコントロールしているというような感覚ですか。

畑井:そうですね、コントロールできる時と、全然できていない時がありますが。

――有難うございます。次は、弁護士になってよかったと思うのは、どのような時ですか。また、つらいと感じるのはどのような時ですか。自身の手がけた案件の中で印象に残っているものをお聞かせください。

畑井:具体的な案件で、ということになると、まだ勤務開始から日が浅いので、終了した案件が多くなく、難しいのですが、例えば国選事件でかなり困難と思われた保釈が通ったときなどには、大きな充実感を感じました。あとは具体的な案件ということではないのですが、日々の業務の中で弁護士の良いところだと思うのは、自分で全部コントロールできるというところ、その分責任も重いけれども、時間とか、仕事のやり方とか、基本的には全部自分で決められるという点ですね。

宮地:なって良かったと思う点は、自由にできるということと、頼ってもらう喜びを感じられるところです。ただその反面、重大な責任を負うことにもなるので、プレッシャーにもなります。これまでに自分が関与した案件の一つで、上の弁護士が数年かけてやっと和解にたどり着いたという民事紛争があったんですけれど、和解成立の場に立ち会った際に、依頼者が涙ながらに感謝してくださった時は、自分でも一人でここまで来たいなあ、こういうことができる仕事なんだなあ、としみじみと感じたことを覚えています。

――有難うございます。続いて実務をしていて学生時代の経験で役立ったこと、学生時代にやっておくべきであったと感じたことはあるでしょうか。先ほどの就職の際に役立ったことというのとは趣旨を変えて、学生の頃こういう経験をしておいたのが、実務でも活きることがあるんだ、という経験をもしなされていたとすれば、お聞かせいただきたいです。

畑井:先ほどは就職活動に向けて学生時代すべきことということだったので、ないんじゃないかとお答えしましたが、学生時代の経験が実務に役立つことはとても沢山あります。私の場合には、先ほどもお話ししたとおりずっと大学の合唱団に打ち込んでいて、3年次には団長もやったのですが、その経験というのはすごく活きていると思いますね。私の所属していた合唱団はとても人数が多く、かつ、幅広い年代の人が参加していて、OB、OGも非常に大勢いるので、そういう人たちとコミュニケーションを取るのが一番大切な団長の役割でした。そうした活動の中で、多様な人と付き合い、様々な世界の、色々な職業の話を聞いた経験というのがすごく役に立っていると感じます。多少上の世代の人とも物怖じせず一緒に話ができるようになりましたし。

――合唱団には何人くらいいらっしゃるんですか。

畑井:大体100人くらいですね。

――他にはどのようなことがありますか。

畑井:本当にサークルに没頭していて、あまり勤勉な学生ではありませんでしたので、他に特筆するようなことがないのが申し訳ないのですが、ただ、逆に、何か一つすごく打ち込んでいたことがあればそれで良いという風にも思うんですよね。

――有難うございます。宮地先生はいかがでしょうか。

宮地:はい、私も同じようなことなのですが、色んなところで、色んな人と人間関係を作れたのが本当に大きかったと思っています。私は、出身は茨城ですけど、小中は千葉の公立、高校は都内の私立、大学は早稲田、次は北海道、と、土地だけでも色んなところで知り合いができた上に、私の場合4歳からずっとサッカーをやっていたので、どこに行ってもサッカーの関係者も新しくできて、今でもそのつながりでクライアントになってくれている人もいますので、やはりこれまでの人間関係は大きく生きていると思います。

――大学というコミュニティだけでなくて、色々な人間が集まるところで活動していたことが良かったということでしょうか。

宮地:はい、それは良かったですね。子ども時代や学生時代を通して色んな人と付き合えたからこそ今も物怖じせずに人と相対することができるという部分もありますし、その人間関係の中からから仕事をお願いしていただくというのが非常に多いので、非常に有難く思っています。

――有難うございます。では次の質問ですが、今後、どういった法律分野での活動をしていきたいですか。それから、これからのキャリアプランをお聞かせください。インタビューの初めに、「幅広い仕事ができるのであさひ法律事務所を希望した」というコメントを頂いて、それをひっくり返す様な内容かもしれないのですけれど、今現在、特に興味のある分野というのをお持ちかどうか、お聞きしたいです。宮地先生からお願いしてもよろしいでしょうか。

宮地:はい。私は2つあって、1つはスポーツ関係ですね。海外ではよくある、選手の移籍等に興味があって、実際少しずつ個人としてやりはじめているものがあります。もう1つは、あまり弁護士の中で聞いたことはないのですが、刑事の加害者支援ですね。出所者支援というか、そういうのを何らかの形でできればいいなと思っていています。

――それは、例えば、刑期を終えて出てこられた方々の再犯率の問題などにも関係しているのですか。

宮地:そうですね。今やっている事件でも、身寄りがない人が罪を犯してしまったというものがあるのですが、そのままでは再び罪を犯すのではないか、と感じる人もいるので、そういう時に、この今の時点から、出所した時の身元引受先として誓約してもらい、出所時には実際に引き受けてもらうという場所があれば、情状弁護という意味でも効果的だと思いますし、実際出てきた後の人生という意味でも安定して落ち着いたところに行けることは、非常に意味のあることではないかと感じています(宮地註:後に知ったのですが、埼玉弁護士会が上記のようなNPO法人と提携して実際に活動しているようです)。

――有難うございます。畑井先生はいかがでしょうか。

畑井:正直、具体的にこの分野というのはまだ考えていなくて、それよりも、せっかく幅広い事件を受けられる環境にあるので、まずジェネラリストを目指したいと思っております。ただ、労働法をロースクール時代相当力を入れて勉強していまして、幸い、事務所に入ってまだわずかな間ですけれど、労働法勉強会の報告者ですとか労働関係の事件とかも結構多くやらせてもらっているので、労働関係で専門性みたいなものが見つけられたらな、とは思っています。

――有難うございます。最後になりましたが、法科大学院生に向けてメッセージを一言ずついただければと思います。では、畑井先生からお願いいたします。

畑井:少し前まで法科大学院生だったので、偉そうなことを言える立場では全然ないのですが、合格後のためにあんまり焦らなくて良いのではないかなあ、と思います。今しかできない議論や、今しかできない勉強があると思うので、一生懸命それに打ち込むことの方が、合格にも、就職にも、実務に就いてからも役立つと思います。
 実際、実務に就いてみると、法科大学院の教授に聞きたくなるような論点に直面することも多いのですが、皆さんは、それを今聞くことができる環境にありますので、そういった環境を大切に頑張っていただきたいなと、若干偉そうになりますが、思いますね。

――有難うございます。宮地先生からも、お願いいたします。

宮地:自分が受験生の時に意識していたのは、司法試験界を飛び交う様々な情報に踊らされず、自分で考えてやるということです。

――本日はお忙しい中ありがとうございました。今後とも、よろしくお願いいたします。

 

 

 

畑井研吾

弁護士

東京大学法学部出身
中央大学法科大学院 既修3期生
平成22年1月よりあさひ法律事務所にて勤務

宮地祐樹

弁護士

 

早稲田大学法学部出身
北海道大学法科大学院 既修3期生
平成22年1月よりあさひ法律事務所にて勤務